読書

【読書】猫を棄てる

no title has been provided for this book
カテゴリー:
Author:
Genre:

一つの物語として、そして一つの事実として読むことができる文章です。

村上春樹さんと彼の父ある村上千秋さんとの関係性を描く、短編小説であり、事実をもとにしたエッセイでした。

父親と息子の関係性というのは、幼少期の密接した関係性がどこかで変容し(それが近接したものになるか、距離感が離れた関係なるかはわからないけれど)、
時の経過となにかタイミングによって転換すると思います。

僕にとって、そのタイミングは4年前の母の病気や祖父母の死というものが転換のタイミングでした。
大人になってから交わることのなかった接点がそうしたイベントでまた交わるようになってきて、幼少期の思い出や写真などを通して過去の記憶を再編成しているような感覚を持っています。

村上さんと少し共感できるところがあるのが、村上さんのご両親が教員であったということ。
僕は両親は教員ではないが、祖父母4人中3人が教員でした。そして、それぞれが教員としては優秀であったということ。(親としての良しあしは別です。)
教え子からの年賀状や贈り物がたくさん来ていたし、それらに対して丁寧に対応していた記憶が鮮明に残っています。

そして、村上さんと同じく僕も一人っ子であるということもあり少なからず期待されているということがあったかもしれないです。
(教員や公務員といった安定したところを選んだほうがいいなんて言われていた記憶があります。)
残念ながら、それらの期待には今のところ応えられていないですが。

猫という媒介を通して、時の流れと人間性や人間関係の変容を描くとても良い本でした。
両親との関係、いまの家族との関係を振り返ってみるのも良いと思います。

また、本書では村上さんの表紙としては新しいイラストレーター高 妍さんが使われていました。
村上さんというと安西水丸さんや和田誠さんのポップなイメージでしたが、今回の高 妍さんはとても優しく繊細な表紙になっています。

時が流れていますね。